• 教員が「やらなくていい仕事」をどう見極めるか
• 実際に私が手放した仕事とその変化
• 「手放すことは悪じゃない」というマインドの大切さ
• 子どもや周囲と“分かち合う”ための工夫
• 教員の「ゆるく働く」実践ヒント
目次
◆1. 「私、全部やってるやん…」と気づいた
「今日も時間が足りない」
「また帰るのが遅くなった」
「なんでこんなに仕事多いんだろう?」
そんなふうに思いながら職員室に戻って、
ふと自分のデスクを見ると、今日中に終わらせたい仕事が山積み。
その一方で、他の先生が談笑しているのが目に入ったとき、
心の中でこんな言葉が浮かびました。
「……私、全部やってるやん。」
プリントの準備、掃除場所の確認、係活動の名簿づくり、掲示物の貼り替え、、、
当たり前のように自分がやってきたこと。
でも本当に、それって全部「私」がやるべきだった?
「それ、先生がやらなくてもよくない?」
そう思ったあの日から、私は“仕事を仕分ける”という視点を持つようになりました。
この記事では、私が実際に「手放した仕事」と、
そこから生まれた“ゆとり”についてお話しします。
◆2. 先生の仕事、実は“誰かでもいいこと”が多い
「自分じゃなきゃダメなんです」
かつての私は、よくそう言っていました。
でも、よくよく見直してみると、
“自分じゃなくてもできる仕事”が意外と多い。
- 学級だよりの印刷や配布
- 校内掲示のレイアウト調整
- 定型文での保護者連絡
- 通常の提出物のチェック
これらの業務、本当に教員でなければできないでしょうか?
たとえば、
印刷やレイアウトは事務職員やICT担当に相談できるかもしれないし、
ルーティン化している業務は、子どもたちや他の教員と「分担・共有」することも可能です。
もちろん、全部を任せるわけにはいかないけれど、
“自分が抱え込まなくてもいい仕事”を見つけていくことが、
働き方をゆるめる第一歩になります。
自分の代わりをつくるのではなく、
“チームとしてどう回すか”を考えることが大事。
「自分が倒れたらまわらない」状態をやめることが、
結果的に子どもたちのためにも、そして自分の健康のためにもなるのだと実感しています。
◆3. 実際に手放した仕事と、起きた変化
● 宿題を減らした
以前は「宿題は毎日出すのが当たり前」と思っていました。
「家庭学習の習慣づけが大事」と教わってきたし、保護者からの期待もあったからです。
でも実際には、内容も形も“とりあえず出す”だけの日も多く、
子どもたちのモチベーションも下がり気味。
さらに、丸つけ・提出確認・未提出対応…全部先生の仕事。
そこで思い切って、週2〜3回の頻度に見直しました。
内容も、プリントではなく「授業の振り返りを書いてくる」「自分で選んだ学習に取り組む」など、
量より“意味のある宿題”を意識。
結果、子どもも家庭も負担が減り、授業と家庭のつながりが深まりました。
私自身も、毎日“宿題の処理”に追われなくなり、心にも時間にも余裕ができたのを感じています。
● ノートへの一言コメントを無くした
かつて私は、子どもが出してきたノートに、毎日一人ひとりコメントを書いていました。
「がんばったね」「よく考えてるね」など、ほんの一言でも、書き終えると1時間近くかかることも。
確かに、子どもたちは喜んでくれるし、保護者にも好印象。
でも、疲れきった日の夜にノート20冊を開くたび、
「これ、誰のために書いてるんだろう?」と思うように。
あるとき、“伝えたいときだけ書く”スタイルに変えてみたんです。
すると、コメントに込める想いや内容の濃さが変わり、
子どもたちの反応も「えっ、先生、書いてくれてる!」と新鮮なものに。
そのぶん、授業中や休み時間に直接声をかける機会が増え、関係も深まりました。
● さまざまな連絡を「学級だより」に一本化
昔の私は、保護者への連絡をあらゆる手段で伝えていました。
プリント、連絡帳、口頭伝達…でも、それが逆に混乱のもとになっていたんです。
「どこに書いてましたっけ?」と聞かれることも多く、
結局、毎回フォローに回ることに。
そこで、「基本的な連絡はすべて週1の学級だよりに載せます」と決め、
学年通信+補足プリントで完結するスタイルに。
最初は不安もありましたが、慣れてくると保護者から「読み返せて助かります」という声も。
私自身も、「伝え方を迷う時間」が激減し、毎週の発信に集中できるようになりました。
● 学校の責任と家庭の責任を明確にした
提出物の期限や宿題の進捗など、以前は「全部先生が管理して当然」と思っていました。
でも、それって本当に“教育”なんでしょうか?
あるとき、「それは本人とご家庭の管理の範囲では…?」と同僚に言われてハッとしました。
そこからは、「これは学校が責任をもつ」「ここは家庭で確認してもらう」という線引きを
学級だよりや個人面談であらかじめ伝えるように。
忘れ物や未提出物の対応に毎回追われていたのが、
「それはご家庭で確認してください」と伝えるだけで、ぐっとラクに。
もちろん最初は心苦しかったけれど、結果的に子どもにも家庭にも主体性が育ちました。
● “慣例”でやっていた仕事をやめた
「去年もこうだったから」
「前の担任がやっていたから」
そんな理由だけで続けていた仕事、思いのほかたくさんありました。
- 行事ごとの細かい飾り付け
- 無意味に形式化した係活動
- 学期末の“気合い入った”壁面制作
正直、「これってなくても大丈夫では?」と思いながら、
「でもやらないと変に思われるかも…」と続けていたんですよね。
そこで思い切って、ゼロベースで「やる・やらない」を判断してみたら…
意外と何も問題は起きませんでした。
むしろ、「先生が疲れてないぶん、授業が落ち着いてますね」と言われることもありました。
このように「手放した仕事」を振り返ってみると、
“効率”だけでなく、“本当に大事なもの”に向き合えるようになった感覚があります。
◆4. “先生がやらなくてもいいこと”を仕分けるコツ
「これは本当に先生の仕事?」
そう自問するだけで、見える景色が少しずつ変わります。
とはいえ、いきなりすべての業務を見直すのはハードルが高いもの。
だから私は、“仕分け”の視点を持つことから始めました。
● コツ①:その仕事、「先生じゃなきゃダメ?」と問い直す
• 自分じゃなくてもできる仕事
• そもそも必要ない仕事
• 誰にも頼めないと思い込んでいた仕事
それぞれを「先生でなくてもできる」「実はやらなくていい」の2軸で仕分けしていくと、
少しずつ手放せるものが見えてきます。
✔ 例:行事の装飾 → 子どもや係活動に任せられる
✔ 例:プリントの整理 → 当番制にする
✔ 例:装飾のラミネート作業 → そもそも必要?
● コツ②:「任せることは、手抜きじゃない」と認識を変える
「人に任せるのは申し訳ない」
「自分がやったほうが早いし確実」
そう思っていた私ですが、実際に任せてみると…
• 子どもが想像以上に力を発揮してくれる
• 同僚と協力できるチャンスが生まれる
• 任せることで、信頼関係が深まる
「任せる」って、効率だけじゃなく“育てる”ことにもつながっていたんです。
特に子どもに任せる場面では、
完璧じゃなくても「やってみよう」と任せることで、
主体性・責任感・協調性といった“力”が育ちます。
● コツ③:「やって当たり前」を1つずつ疑ってみる
「この仕事、去年もやってたし…」
「周りがやってるから、自分も…」
そんな“無意識のルール”が、
あなたの時間と心をじわじわ削っているかもしれません。
私はまず、「それって本当に今の子どもたちに必要?」と考えるようにしました。
• 昔からある掲示物 → 情報更新されてる?
• 学期末の壁飾り → 子どもたちの希望と合ってる?
• 担任がやること → 学年で分担できない?
“当たり前”を疑うのは勇気がいります。
でも、疑った先にこそ、「やらない自由」「手放せる余白」が見えてくるんです。
◆5. まとめ|自分の心と時間を守る「仕分け力」を身につけよう
「働き方改革」と聞くと、どこか他人事のように感じたり、
「どうせ無理だよ」と諦めそうになったりしますよね。
でも実際に私が実感したのは、
“全部を変える必要なんてない”ということ。
宿題を減らしただけで、
ノートコメントをやめただけで、
「これって必要?」と問い直しただけで、
少しずつ心と時間に余白ができました。
働き方改革の第一歩は、“仕分けること”から。
• 「本当に必要な仕事か?」
• 「自分がやらなきゃいけないことか?」
• 「子どもや周囲に任せられないか?」
この3つの視点を持つだけで、
“やらなきゃ”の呪いから、少しずつ解放されていきます。
「仕事は減らせない」と思っていた私が、
“ゆるく働く”という選択肢を持てたように、
あなたにもきっと、できることがあります。
あとがき
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
“ゆるく働く”って、決して「手を抜く」ことじゃないんです。
「自分のペースを大事にして働く」こと。
私はそれに気づいてから、教員生活がぐっと楽になりました。
自分の心と時間を大切にできる先生が増えるように――
そんな想いで、これからも発信していきます。
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